2017-01-01から1年間の記事一覧

実態

無傷のまま切り裂かれる、通り魔は不在のまま、実在のない世間だ。世界はいつも無自覚で、絶やしようのない根源に、僕らは怒れないまま、食堂のコップの水垢や、そういったどうだっていいものに苛立って、そんな自分を嫌悪する。ループ。吊橋の先、地面から…

夢がある

夢っていつまで持ってていいものなのだろう。 いつまでだって持っていていいよ、と人は言うだろうが、きっとそれには、「今守るべきものを犠牲にしなければ」と前置きがつく。犠牲を払わなければ辿りつけない場所に夢があるなら、その夢は持っていていいもの…

淡い夏

透明なものは、あってないように見える。それでも、触ればそこにあるし、光は屈折していくし、色なんて、あってもなくても変わらないのかもしれない、と思う。ただ、君が着ていた黄蘗色のカーディガンが眩しかった。遠ざかっていく君から、淡い夏の香りがし…

病床にて

針と糸で 外套のほつれを繕うような 日の光を浴びた毛布で やわらかくあたたかく包むような 代償のない慈愛をあげたい 何にでもなれるのならば 波になりたい 夜は静かな音を立てて やさしい夢の中から ここにいるよと教えてあげたい月の満ち欠けに追い立てら…

パフェとコーヒー

心が揺れ動いたときは、日記を書くより詩を書く方が、より正確に記録できる、と思ったのはずいぶん幼かったときのことだ。それ以来、それでも何か継続することに意味があるのでは、と、何度となく男もすなる日記といふものに手を出してみたのだけれど、何と…